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終わらざる夏

10月29日(金)    「終わらざる夏」  (浅田次郎著)

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 戦争末期、召集令状一枚で引っ張られた三人の男たちがソ連国境の占守(シュムシュ)島 *1 に向かった。一人目は45歳の洋書を翻訳する出版社の編集長である。彼は万年筆より重いものを持ったことがなかった。二人目の「鬼熊」の異名を持つ軍曹は、歴戦の勇士ではあったものの、手の指を何本か失った傷痍軍人だった。三人目は医大を出たばかりの青年軍医である。
 三人の任務は何か。任地に赴く途中、それは自ずと知れた。彼らはどうなるか。結末に至るまで、たしかなところはわからない。何としてでも生き延びてほしい。彼らの家族や故郷のことを知ってしまった読者はそう願わずにはいられなくなる。

 物語の結末は、彼らが理不尽にも抑留されることになった酷寒のシベリアの強制収容所にある。すべてが徒労のなかでうち沈んでいく。しかし、凍てつくような悲しみを癒す「間奏曲」のように聞こえるコサックの兵士、サーシャの独白。夢か現か、サーシャの魂は時空を超え、片岡の妻子の前に姿を現し、愛を授け、また死にゆく兵隊たちに寄り添うのである。片岡が残した「セクサス」の詩のように美しい言葉が哀切を誘う。悲しくも静かな、しかし深い感動が尾を引く。

             *1  hoppou.gif

 北方領土と聞くとき、国後(くなしり)うあ択捉(えとろふ)を、さらに歯舞(はぼまい)や色丹(しこたん)などを考えます。ところが小説に出てくる占守(シュムシュ)島はカムチャッカのすぐ近くの赤く塗った島なのです。驚きました。

 「”日本兵”ではなく、名前や生活を持った人たちの戦争を描きたかった」と著者が言うように市民の視点から描いた戦争が、情感たっぷりに描かれていて共感を呼ぶ。

 「終戦後始まった占守島での死闘」 朝日新聞8月29日 書評(姜 向中)
 「戦争 民衆から描く」 朝日新聞9月11日 インタビュー
  スペシャルインタビュー 浅田次郎「終わらざる夏 上・下」 『男の隠れ家』 9月号
 

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 趣味はいろいろあるのですが、時間とお金の使い方が巧くいかない。
(時間があるときに限って、お金がなかったり)
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登山(ハードな山登りもこなすために日頃のトレーニングで汗をかく)
釣り(防波堤や浜での海釣り)
コンピュータのソフトを使い、書籍や雑誌、切り抜きの整理・・

 気軽に何でも書き込みして下さい(場所も気にしないでいいです)。

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