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2月の読書

2月12日(木)  「千の輝く太陽」 ( カーレド・ホッセイニ著 )

 望まれぬ子として生まれたマリアムは、粗末な小屋で母と暮らしている。父は土産を持って毎週娘を訪れるが、兄弟達に逢わせることも、経営する映画館に連れて行くこともしない。ある日、マリアムは父の屋敷を突然訪れ、その扉を叩いた。それが、悲劇の始まりになるとも知らず…。そして彼女の人生は闇に包まれる。二十年後、聡明な少女ライラとの間に、美しい心の絆が生まれるまで。アフガニスタンの激動の歴史に翻弄されながらも力強く生き抜く女達の姿を感動的に描き、2007年度全米年間ベストセラー1位を記録。『君のためなら千回でも』著者の傑作長篇。

感動のうちに読み終わりました。女性が生きるにはあまりに過酷な国情と慣習のアフガニスタン。その中で生きる二人のヒロインは健気で強くて忍耐強くて優しくて。
 有り余る豊かさの中では目に入らないものも確かにある。本当に大切なものは形には表れない、そんな気持ちにもなりました。
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2月19日(木)  「悼む人」 ( 天童荒太著 )

週刊誌記者・蒔野が北海道で出会った坂築静人は、死者を<悼む>ために、全国を放浪している男だった。残忍な殺人や男女の愛憎がらみの事件の記事を得意とし、人の善意を信じられぬ、猜疑心の塊のような蒔野は、静人の不可解な行動に疑念を持つ。 「そんなことをして一体何になるというのか?」 蒔野は静人の化けの皮を剥ごうと、彼の身辺を調べはじめる 。
その頃、静人の母・巡子は末期の胃癌を患っていた。静人の妹・美汐も、別れた恋人の子供を身籠っていることが判明する。 「仏様の生まれ変わり」と言われた夫を殺害し、刑期を終えて出獄した奈義倖世は、殺害現場で亡夫を悼む静人と出会い、夫を殺した事実を告げぬまま行動をともにすることに 。

  <愛や死への思い問う鏡のような物語> 朝日新聞 12/14 重松清:評者から
「読み手の胸をうずかせた”痛み/悼み”は、本を閉じた瞬間に消え失せるものではない。物語は鏡だった。<悼む人>は物語から旅立って、読み手の生きる現実へと渡ってきた。静人の声が遠くから聞こえる。その声は、あなたには自分のことを悼んでくれる人がいますか、あなたが悼みたい相手はいますか、と繰り返し問いかけてくるのである」

 その人は誰を愛したか。誰に愛されたれたか。どんなことで人に感謝されたか。私自身が亡くなるとき、悼む人がいるのかとか不思議な恐怖を感じた。死に軽重をつけず、その人のことを決して忘れずにいるというのは、<人々の安逸な暮らしを乱し><人々を戸惑わせ、苛立たせる>ものだから。
 重松氏の評の冒頭にある言葉がまさに今の気持ちです。感想めいたことを書くよりその文を揚げておきます。<胸がざらつく。どうにも落ち着きようのない思いに包まれる>

2月22日(日)  「テロル」 ( ヤスミナ・カドラ著 )
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 イスラエルの都市テルアビブに瀟洒な家をかまえるアラブ系の医師アーミンは、最愛の妻シヘムとともに幸福な生活をおくっていた。だが、あの自爆テロがすべてを変えた。19名の犠牲者。その中にシヘムがいたのだ。呆然とするアーミンに刑事は衝撃的な言葉を吐く。「テロの首謀者はあなたの妻だ」妻は妊婦をよそおって爆弾を腹に抱え、自爆したという。なぜ彼女がそんなことを…。アーミンは真相を探るため、妻のルーツを探り、やがて想像を絶する真実に辿りつく。イスラムの夫婦の見えざる亀裂を描き出す、哀しみに満ちた愛の世界。テロが横行する極限下、イスラム社会の至高の愛と究極の絶望を描いた傑作。(本の裏表紙)

 真相を知ろうとするアーミンに対して若いムジャヒディンは言う
「どの真相かね。あなたにとっての真相か、それともあなたの妻にとっての真相か。自分の義務がどこにあるのかを考えた女にとっての真相か、それとも、悲劇から目を背けてばかりで自分は無関係だと思いこんだ男にとっての真相か。・・・」(p170)
そして最後にこう結ぶ。「奥さんが死んだのは、あなたの罪を購うためなのだ。」

 良書とはその本と出合うことで読者に「おもしろい」と感じさせてその後のその人の読書感覚を変えてしまうのみならず、世界の見方そのものまでも変えてしまう力を持っているのだということを、この作品は実感させてくれる。(訳者あとがきより)

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Author:やまさん
 趣味はいろいろあるのですが、時間とお金の使い方が巧くいかない。
(時間があるときに限って、お金がなかったり)
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登山(ハードな山登りもこなすために日頃のトレーニングで汗をかく)
釣り(防波堤や浜での海釣り)
コンピュータのソフトを使い、書籍や雑誌、切り抜きの整理・・

 気軽に何でも書き込みして下さい(場所も気にしないでいいです)。

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